【熱中症対策関連・番外編】 「水が苦手な子どもたち」が増えています ~学校現場から見えてきた新たな課題と対策
- 公開日
- 2026/07/18
- 更新日
- 2026/07/14
今日の出来事
熱中症対策では、「こまめな水分補給」が基本であることは広く知られています。しかし、小中学校では近年、「のどが渇いていても水が飲めない」「水そのものの味が苦手」「ジュースやスポーツドリンクは飲めるが、水は飲みにくい」と話す生徒が一定数見られるようになりました。
この課題に着目し、本校副校長・早川功は数年前から学校現場で継続的な調査を行っています。保健室利用状況や生徒への聞き取り、学校生活での水分補給の実態などを分析したところ、水が苦手な生徒の中には十分な水分補給ができず、暑い日に体調を崩したり、朝から保健室を利用したりするケースが見られることが分かってきました。
また、登校途中に自転車で気分が悪くなったり、体育や部活動の前から脱水傾向が見られたりする事例もありました。ただし、これは全ての生徒に当てはまるものではなく、体質や生活習慣など様々な要因が関係しています。
その背景の一つとして考えられるのが、新型コロナウイルス感染症の流行による学校生活の変化です。
コロナ禍では感染症対策として水筒の持参が推奨され、共用の冷水機や水道の利用を控える学校も多くありました。また、蛇口に直接口を付けて水を飲むことは避けられ、施設整備により自動水栓が普及したことで、以前のように気軽に蛇口から水を飲む機会が減りました。
さらに、ご家庭でもミネラルウォーターや浄水器の利用が増え、水道水に触れる機会そのものが少なくなったことも、水道水を苦手と感じる子どもが増えた一因となっている可能性があります。
もちろん、これらが直接「水が飲めない子ども」の増加につながったと断定することはできません。しかし、学校現場では生活環境の変化が子どもたちの飲水習慣に影響を与えている可能性があると考え、継続的な調査を進めています。
文部科学省の「学校における熱中症対策ガイドライン」では、のどが渇く前からこまめに水分補給を行うことが推奨されています。しかし、水を飲むこと自体が苦手な生徒にとっては、この基本的な対策を実践することが難しい場合があります。水分補給が不足すると脱水が進み、頭痛やめまい、集中力の低下、倦怠感などを引き起こし、熱中症の危険性を高める要因となります。
また、この課題は災害時にも関係します。避難所では備蓄水や給水車の水を飲むことが基本となります。普段から水を飲む習慣が身に付いていない場合、脱水や体調悪化の危険性が高まることも考えられます。「水を飲む力」は、熱中症予防だけでなく、防災教育の視点からも大切な生活習慣の一つです。
こうした恩方中学校の取組は、「水が苦手とする子どもたちの存在」が社会的にも注目されたこともあり、恩方中学校の調査がNHK「所さん!事件ですよ」をはじめ、日本テレビ「ZIP!」、TBS「Nスタ」、東京新聞などでも紹介されました。学校現場から見えてきた新たな課題として、多くの反響をいただいています。
恩方中学校では、この調査結果を踏まえ、WBGT(暑さ指数)の毎日の測定、体育館への冷房設備の整備、冷房の効いた退避教室の活用、プレクーリングの導入、活動時間や内容の見直しなど、多面的な熱中症対策を進めています。さらに、水が苦手な生徒には「一度にたくさん飲む」のではなく、「少量をこまめに飲む」「朝起きて一口の水を飲む」「飲みやすい温度から始める」など、一人一人に応じた支援を行っています。
熱中症は予防できる災害です。そのためには、設備や環境を整えるだけでなく、子どもたち自身が適切な水分補給の習慣を身に付けることが欠かせません。学校と家庭、そして地域が連携しながら、「水を飲む力」を育み、子どもたちの命と健康を守る取組を、これからも恩方中学校は続けてまいります。