松姫ものがたり その9
- 公開日
- 2021/10/28
- 更新日
- 2021/10/28
恩方の歴史と暮らし
しばらくしてさらに山をくだり「心源院(しんげんいん)」というお寺に入りました。
お坊さまは、卜山和尚(ぼくさん*おしょう)という立派な方でした。
【*原文ママ ぼくざんと読むことが多い】
松姫さまは和尚さまに
「尼(あま)になって お父様をはじめ 亡くなられた方々、敵も味方も… 両方のたましいを鎮(しず)めてあげたいと存じます。どうぞ、お弟子(でし)にしてください。」
と頼みました。
卜山和尚はだまったままでした。
何度もお願いする松姫さまの覚悟(かくご)が本物だと見定めると、やっと
「修業は厳(きび)しいぞよ」
といいながら許してくださいました。
男の僧でも逃げ出すような厳しい修行に、松姫さまはひたすら励(はげ)みました。
そして五年が過ぎたとき、卜山和尚は
「これからは信松尼(しんしょうに)と名乗りなさい」
とお弟子の一人に加えてくれました。