学校日記

松姫ものがたり その8

公開日
2021/10/20
更新日
2021/10/20

恩方の歴史と暮らし

次の日、やっと上恩方(かみおんがた)にある金照庵(きんしょうあん)という山寺にたどりつきました。
「観音さま、ありがとうございました」
松姫さまは心から観音さまにお礼を云いました。
金照庵ではしばらくのあいだ、畑をたがやしたりしてつつましく暮らしていました。

そしてそれは六月二日の夜のことでした。
ドドド ゴーッ ゴーゴー
突然、嵐(あらし)が起こり、暗闇(くらやみ)の中に若武者(わかむしゃ)が見えたのです。
顔が青白く無念(むねん)のようすで、だんだん遠ざかって行きました。
「あっ、信忠さま」

あとになって、この夜は京都の本能寺(ほんのうじ)で明智光秀(あけちみつひで)が織田信長公に謀反(むほん)をおこした夜と分かりました。
この時、信忠さまも討(う)ち死にしました。
「信忠さまがお別れに来て下さった」
松姫さまは涙がかれるほど泣きました。