学校日記

10月7日(水)謝る力と、自分を守る力を育てるために

公開日
2026/10/07
更新日
2026/10/07

学校長より

子どもが注意されても謝らないとき、大人は「自分の非を認めてほしい」と思います。一方、何かあるたびに「ごめんなさい」と言う子には、「本当に納得しているのだろうか」と心配になることもあります。


育てたいのは、何でも謝る習慣でも、謝らずに押し通す強さでもなく、自分の言動を振り返り、謝るべきことと、謝らなくてよいことを見分ける力です。


謝ることは、相手への思いやりや信頼を守ります。一方、謝らないことは、事実や自分の尊厳を守る場合があります。


謝ることで、思いやりと信頼を守る

例えば、子どもが遊びに夢中になり、約束の帰宅時刻を過ぎた上、「うるさいな」と言い返したとします。


ここで振り返るのは、連絡せずに遅れたことと、相手を傷つける言い方をしたことです。


「心配をかけてごめんなさい。次に遅れそうなときは連絡する」

この謝罪は、大人に負けたことではありません。自分の行動が相手に与えた影響を認め、関係と信頼を守る行為です。さらに、「どうしたら時間に気付けるか」「連絡できないときはどうするか」まで考えると、謝罪が次の行動につながります。


伝えるのは、「あなたは悪い子だ」ではなく、「この行動はよくなかった」ということです。


「自分の間違いを認めても、自分の大切さは変わらない」と感じられることが、安心して振り返る土台になります。


謝らないことで、事実と尊厳を守る

一方、謝らなくてよい場面もあります。


教室の物を壊していないのに、「あなたが壊したのではないか」と言われた場合、相手を怒らせないために認める必要はありません。


「私は壊していません。何があったのか、確かめてほしいです」

これは、事実と自分の尊厳を守るための言葉です。相手が大人でも、子どもの説明は丁寧に聞かれる必要があります。


また、人前で発表することが怖い子が「それくらい平気でしょう」と言われたときも、怖がっていることを謝る必要はありません。


「私には怖いんだ。少しずつ練習したいから、手伝ってほしい」

怖い、悲しい、困っているという気持ちは、それ自体が悪いものではありません。ただし、気持ちを認めることと、すべての要求を通すことは別です。「怖いんだね。どんな方法なら取り組めそうかな」と、気持ちの理解を次の一歩につなげます。


謝ることと、相手に伝えることは両立する

実際には、謝るべきことと、伝えるべきことが同時に起こります。


例えば、保護者が「どうして、こんなこともできないの」と言い、子どもが「うるさい!」と叫んでドアを強く閉めたとします。


子どもは自分の言い方や行動を振り返る必要がありますが、傷ついた気持ちまで否定する必要はありません。


「叫んで、ドアを強く閉めたことはごめんなさい。でも、『こんなこともできないの』と言われて悲しかった」

このように、自分の非を認めながら、相手の言動で傷ついたことも伝えられます。


大人も、

「叫んだり、ドアを強く閉めたりするのはやめてほしい。でも、私の言い方もよくなかったね。ごめんなさい」

と応じられます。


大人が謝ることは、指導する立場を手放すことではありません。互いに自分の言動に責任をもつ姿を示すことです。


「謝りなさい」の前に、何が起きたか、また、その言動の背景は何かを確かめる

これは、子どもたちを指導する際に教員も強く意識をしていることです。


子どもが謝らない理由は、反省していないからとは限りません。何が悪かったのか分からない、説明を聞いてもらえていない、気持ちが高ぶって言葉が出ない場合もあります。


まずは、

「何があったの?」

「そのとき、どう思ったの?」

「直した方がよいところは、どこだと思う?」

と尋ね、事実、気持ち、行動を整理します。


説明を聞くことは、言い訳をすべて認めることではありません。背景を理解し、本人が引き受ける責任を明確にすることです。


反対に、すぐ謝る子にも、

「何について、ごめんなさいと思ったの?」

「まだ伝えたいことはある?」

と聞いてみましょう。謝罪で話が終わり、困りごとが置き去りになっていないかを確かめられます。


その場で話せないときは、落ち着いてから伝える、紙に書く、別の大人に間に入ってもらうなどの方法もあります。一人で言い返せることだけが強さではありません。


自分の誤りを認める勇気と、自分を大切にする勇気

謝ることと謝らないことを見分ける力は、振り返りとやり直しを重ねて育ちます。


謝るときには、相手への思いやりと信頼を守る。

謝らないときには、事実と自分の気持ち、尊厳を守る。


目指したいのは、大人に従うためだけに謝る子でも、自分の非を認めず押し通す子でもありません。


自分の間違いには向き合い、自分の気持ちや事実も大切にしながら、相手とよりよい関係をつくろうとする子どもです。


その力を育てるために、大人も子どもの話を聞き、必要なことを伝え、自分に非があれば謝る姿を示していきたいと思います。