令和7年度卒業式校長式辞
- 公開日
- 2026/03/24
- 更新日
- 2026/03/24
校長室より
校庭の桜も咲き始め、やわらかな日差しに春の訪れを感じる季節となりました。このよき日に、ご来賓、保護者、地域の皆様のご臨席を賜り、ここに第四十一回卒業式を挙行できますことは、本校児童、教職員にとりまして大きな喜びでございます。ご臨席の皆様に心から御礼申し上げます。
六年生の皆さん、ご卒業、おめでとうございます。先ほど、一人一人に卒業証書を渡しました。凛としたその表情からは、皆さんが過ごした六年間、そして六年生としてのこの一年間が、とても充実していたことを感じます。
さて、皆さんが入学した六年前、「令和」が始まって最初の入学式は既に歴史の一ページとなっています。新型コロナウイルス感染症の世界的大流行によって、小学校入学というかけがえのない時間のワクワクの多くを奪い去られてしまった事実。それでも、皆さんは、ここ南大沢の地で、地域の人々の温かい支えを受けて日々を朗らかに、そして誠実に過ごし、心と身体を大きく成長させてきました。二年生の時、東京で開催されたオリンピック・パラリンピックをはじめ、3年生の時の北京、5年生の時のパリ、そしてつい先日のミラノコルティナで行われた大会に至るまで、この6年間の間に実に4回ものオリンピックが開催されたことは、特筆すべきこと。そして同じく皆さんが小学校で過ごした6年間に四度も、日本人がノーベル賞を受賞したことも覚えておきたい快挙でしょう。こうした出来事の一つ一つが、皆さんの目を広く世界へ向けるきっかけともなったことと思います。世の中の出来事と、かけがえのない小学校生活の思い出とを、ぜひ一緒に覚えておいてください。思い出は自分を支える一生の財産として、必ずやこの後の皆さんの人生の助けとなってくれることでしょう。
さて、皆さんが過ごしたこの6年間は、華やかな面ばかりではありませんでした。残念ながらこの間、世界中で起きている紛争が止むことはありませんでした。ロシアによるウクライナ侵攻、パレスチナの徹底的な破壊、そしてイランとアメリカ・イスラエルの間で始まってしまった戦争と、当たり前の日常を突然奪い去るような衝撃的な出来事が次々と起きています。今この瞬間も、決して戦争など望んでいない多く市民、子供たちが恐怖に震え、心を痛めている。それを知った時、私たちはそうした現実から目を背けて良いでしょうか。遠く離れた日本だから、自分たちには関係のない出来事だ、と片づけて良いでしょうか。平和でだれもが幸せな世の中をつくるために何が必要か、今こそ考えてほしいと願っています。究極的に必要なことは一人一人の心に必ず根付いている「良心」を大切にし、「自分ではない誰かの幸せを願う心」だと思うのです。そんなことを考えた時、私はここにいる6年生の姿がすぐに浮かんできます。
私が南大沢小学校に着任したのは3年前、皆さんが4年生になった時です。その年の秋、社会科見学に同行しました。最初の訪問地は東京スカイツリー。私も上まで昇るのは初めてでしたが、クラスの中にはエレベーターに乗るのが不安になり立ち止まってしまう児童がいました。そんな時、皆さんは早く行きたい気持ちよりも、その一人の児童を心配し、気遣いながら何本かのエレベーターを見送りました。イライラしたり、文句を言ったりするのではなく、ただ黙って待つ。これは簡単なことではありません。その日の見学では東京湾を巡る「社会科見学船」という船にも乗りました。天気が良く、レインボーブリッジの下をくぐりながら子供たちはみな展望デッキに上がりました。誰からともなく歌が始まり、そして何人かはダンスをはじめました。その輪の中にはスカイツリーで不安そうだった子の笑顔もありました。
5年生では、清水の移動教室に行きました。ボードに乗って海面を漕ぎ渡るサップ体験の時には、カヌーに大人数でまたがったり、海の中の魚を見つけて大はしゃぎしたり、それはそれは楽しそうでした。夜のレクリエーションでは海岸に出て焚火をしました。せっかくの経験だからと「火起こし」を子供たちに任せたら火が付くまでに30分以上かかってしまって残り時間もわずかになってしまいましたが、燃える炎を見ながらみんなが最後に元気に歌ったのはこの学校の「校歌」でしたね。仲間と、この学校への深い愛情を感じました。
6年生、日光移動教室で過ごした3日間でも、皆さんの心の美しさを何度も目にました。それは世界遺産や観光地、美しい自然の中ではありませんでした。宿舎で、レストランで、何度も経験する食事の際の出来事でした。美味しい食事のあと、「ごちそうさま」をしているのに、皆なぜか席を立ちません。一心に机に向かって何かを書いているのです。「もうすぐ出発するよ」と呼び掛けても「ちょっと待ってください」とその手を止めない。実は割りばしの袋にメッセージを書いていたのです。見せてもらうと、食事の美味しさ、作ってくださった方への感謝、そして自分たちにとってこの旅行がいかに心に残る大切なものであったか、そんなことが小さな字でびっしり書きつけられていました。一人二人ではありません。みんなが何とか感謝の気持ちを伝えようと、自分の言葉でその思いを綴っていたのです。こんな場面を目にするのは初めてでした。それはレストランや宿の人も同じ。皆さんの真心を知って、目に涙を浮かべ、声を震わせて感謝を述べていた「湯の湖荘」の女将さんの姿が忘れられません。
登下校中、休み時間の校庭、校外学習の訪問先…、何事にも一生懸命取り組み、お世話になった人への感謝を忘れず、仲間を大切にし、低学年の児童にいつも優しく接する…これはこの南大沢小学校が学校の勉強以上に大切にしている「伝統」です。私がこの3年間に目にした皆さんの振る舞いは、その「伝統」を更に価値ある、美しいものに高めてくれました。皆さんが当たり前のように日々取り組んできたことは、南大沢小学校の後輩たちにずっと受け継がれていくことでしょう。学校のリーダーとして素晴らしい学校を創ってくれてありがとう。
いよいよ四月からは中学生です。新しい出会いや中学校生活への期待にワクワクする一方で、不安を感じている人もいるかもしれません。でも、大丈夫。皆さんは一人ではありません、皆さんの周りにいる友達や家族、先生方や地域の方が必ず見守ってくれています。南大沢小学校で培った「やさしさ」を大切に、自信をもって一歩を踏み出してください。人の目を気にするよりも、自分らしく、自分だけの人生を歩んでください。
保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。卒業証書を手にする姿に、感慨もひとしおの事と思います。私たち教職員一同は、お子様の健やかな成長を願って精一杯教育活動を行ってまいりました。行き届かぬところも多々あったかと思いますが、皆様のご協力、お力添えをいただきましたこと、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。これからは中学校という新しいステージに移ります。義務教育九年間の総仕上げです。この先試練もあると思いますが、お子様の心の支えとなり、一緒に乗り越えていただきたい、と願っています。
皆さん、いよいよ旅立ちの時です。皆さんが中学校で元気に、そして笑顔で活躍することを心から願って、私の式辞とさせていただきます。
令和八年三月二十四日 八王子市立南大沢小学校 校長 安田 尚民