ジャンパーの教え
- 公開日
- 2014/12/08
- 更新日
- 2014/12/08
校長より
おはようございます。今日は、物語を一つお話しします。
ミコちゃんは小学校3年生、魚とりが大好きです。今日も仲良しの友達のナオちゃんと近くの川へ、魚とりに行く約束をしました。
学校から帰ると、網とバケツをもって、そしていつも着ているジャンパーを着て「行ってきま〜す」と元気よく出かけました。ミコちゃんのお母さんは、あまりお金を持っていません。だからお家にあった、残った布でミコちゃんのジャンパーを作ってくれたのです。ミコちゃんはこのジャンパーがお気に入りです。
さあ、川に着きました。ナオちゃんと二人で魚を取ります。「メダカがいた!」「あっ!フナだ!」二人は夢中で魚を取ります。川は小さな川で、深さもミコちゃんの膝くらいです。ミコちゃんはいつも魚を取っているので、だんだん川のどんなところに魚がいるか分かってきました。「あのあたりにいるぞ!」と考えて網ですくうとだいたい取れます。
川に沿って下っていくと、そこに針金で囲まれたところがありました。その針金はバラの茎のように棘がついています。人が入れないように針金で囲まれているのです。ミコちゃんは、その針金の向こうに「魚がいるな!」と思いました。「ナオちゃん、あそこに魚がいっぱいいそうだね」ミコちゃんが言いました。ナオちゃんは「でも、あそこは入っちゃいけないんだよ」と答えました。ミコちゃんには針金の向こうに魚がいっぱいいるように見えます。ミコちゃんは、スッと身をかがめて、針金の下をくぐり抜けようとしました。少しドキドキしたけれど、行こうとしました。すると何かが背中のあたりを引っ張ります。ジャンパーの、背中の、真ん中あたりを誰かが引っ張ります。ミコちゃんは「あれ!おかしいな」と思いながら、「えい!」と思い切ってくぐり抜けました。その瞬間です、「ビリッ」と大きな音がしました。「アッ!」ミコちゃんの心臓はドキドキ、ドキドキ鳴っています。ミコちゃんはあわてて戻ります。ジャンパーを脱いで、背中のあたりを見ました。ナオちゃんが「破れちゃったね」と言いました。「うん」ミコちゃんは泣きそうになりながら頷きました。お母さんの優しい笑顔が頭に浮かびました。
網とバケツと背中の破れたジャンパーをもってお家に帰りました。ミコちゃんはお母さんにジャンパーのことを話しました。正直に話しました。お母さんは「危ない目に会わなくってよかったね」と言いました。「ジャンパーが悪いことをしてはいけないよ、と教えてくれたんだね」と優しい笑顔で言いました。そしてすぐに破れたところを直してくれました。
それからミコちゃんは、ジャンパーの背中を見るたびに、ルールを守ろうと思うようになりました。
平成26年12月8日 児童朝会で、校長の話より