学校日記

6月30日(火)「自分で決めることの難しさ」に寄り添う学校(学校だより巻頭言より)

公開日
2026/06/30
更新日
2026/06/29

学校長より

私が担任をしていた頃、ある子どもからこんなことを言われたことがあります。 「先生、よく『○○さんはどうしたい?』って聞くからやだ。」その言葉を聞いたとき、私は「そうだよな。そう言われるのって苦しいよな」と感じました。子どもの思いを大切にしたくて問いかけていたつもりでしたが、「自分で決めること」そのものが、大きな負担になっていたのかもしれません。

ウェルビーイングについて書かれた教育書などでは、自分で選び、自分で決めて行動しているという実感が、幸福感や意欲につながる大切な要素であると紹介されています。そのことも踏まえ、本校では今年度の始業式や入学式で、「自分のことは自分で決められる子になってほしい」というメッセージを子どもたちに伝えました。【写真2 始業式提示資料】

しかし、日々子どもたちと接していると、「自己決定は大切だから、自分で決めよう」と簡単には言えないとも感じます。 何かを選ぶということは、別の選択肢を手放すことでもあります。良い面も難しい面も考え、うまくいくか分からない中で決断し、その結果を自分で受け止めなければなりません。大人でも迷うのですから、子どもが不安や怖さを感じるのはごく自然なことです。

むしろ、「これはやめておこう」「こうしてみたらどうかな」と大人が決めてくれた方が、その場では安心できることもあります。もし思うような結果にならなくても、「言われたとおりにやっただけ」と考えられるからです。一方で、 自分で決めたことは成功も失敗も自分自身のものになります。その責任を引き受けるには、大きな勇気が必要です。だからこそ、本校は子どもたちに「自分で決めなさい」と突き放す学校ではなく、「一緒に考えよう」と寄り添う学校でありたいと考えています。【写真3 4月教職員研修資料】

ただ、その寄り添い方は決して簡単ではありません。背中を押した方がよい子もいれば、今は立ち止まって気持ちを受け止めてもらうことを必要としている子もいます。同じ子どもであっても、その日の体調や気持ち、置かれている状況によって必要な支援は変わります。 「あと一歩を応援すること」と、「苦しさや不安に共感すること」。その匙加減、塩梅は一人ひとり違います。そして、その見極めは本当に難しいものです。

だから私たち教職員も、日々悩み、話し合い、考え続けています。時には「もう少し待てばよかった」「あの時はもう少し背中を押してもよかったかもしれない」と振り返ることもあります。もちろん、失敗しないと言い切ることはできません。しかし、その経験も学びに変えながら、一人ひとりの子どもに合った寄り添い方を探し続けています。

学年が上がり、中学校、高校、そして社会へ出るにつれて、自分で判断し、自分で決めなければならない場面は確実に増えていきます。だからこそ義務教育の間は、信頼できる大人に相談し、助言を受けながら、小さな自己決定を積み重ねてほしいと願っています。

迷っても大丈夫です。立ち止まっても大丈夫です。そして、一人で抱え込む必要はありません。 子どもたちが「困ったら相談できる」「一緒に考えてくれる大人がいる」という安心感の中で、自分で決める勇気を少しずつ育んでいけるよう、教職員一同、これからも悩み、学び続けながら、一人ひとりに寄り添う教育を大切にしてまいります。

保護者、地域の皆様におかれましても、子どもたちの成長をともに支えるパートナーとして、山田小学校の教育活動への変わらぬご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

学校だより7月号 HP