以前 「 箱根駅伝 」 に出場したある選手が、こんなことを言っていました。

　「 レース中、苦しくて苦しくて何回も足が止まりそうになった。　もし、自分一人で走っているのなら、とっくに棄権していたと思う。　しかし、自分の肩には仲間の汗のしみこんだ襷が掛かっていたから、最後まで走り通すことができた。」

　また、別の選手は、こんなことを言っていました。

　「 自分は、自分のためだけでなく、選手に選ばれなかった仲間、予選会で敗れ去った他校のライバル、自分を指導してくれた監督やコーチ、大会を支えてくれている裏方の人たち、そして、いつも自分を励ましてくれた両親の思いまで背負って走っているのだ。」

　私は、こうした言葉に、他のスポーツにはない 「 箱根駅伝 」 ならではの感動の源が示されているのではないかと考えました。

　駅伝に限らず、あるいはスポーツに限らず、何かに必死になって取り組んでいる人の姿は感動を呼びます。
　さらにその姿から、自分のためだけでなく、「 自分以外の誰かのために 」 という思いが伝わってきたとき、それを見る者の感動はさらに大きく、さらに深まるのではないでしょうか。

　人は、何かを背負って生きています。
　私であれば、別所中学校の校長という立場で背負っているもの、家庭では父親や夫として背負っているもの、その他たくさんのものを背負って生きています。　時にそれらは、「 責任 」 という言葉に置き換えられるかもしれません。

　「 責任 」 は、しばしば人にプレッシャーを与えます。　それが、負担になることもあります。　しかし、同時に 「 責任 」 は、壁を乗り越える力になってくれることもあるのです。　苦しそうな表情を浮かべて走る駅伝選手が、時折ぎゅっと襷を握りしめて走る姿は、それを証明しているように思えます。

　皆さんはまだ中学生ですから、背負っているものはそう多くはないと思います。　しかし、それでも自分が学校・学年・学級の中で果たすべき責任、家庭や地域の中で果たすべき責任は、確実にあるはずです。

　４月に進学や進級を迎える皆さんには 「 この１年 」 とは言いません。
　とりあえずこの３学期、学校生活の中で何を背負って、どんな責任を果たしていきますか？　少なくとも、何も背負おうとしない寂しい人間、無責任な人間にだけはならないでください。

　「 自分のために 」 頑張ることはもちろんですが、「 自分以外の誰かのために 」 も力を尽くせる３学期にしてほしいと思います。