第四十回卒業式 式辞
- 公開日
- 2025/03/24
- 更新日
- 2025/03/24
校長室より
桜のつぼみは膨らみ、命が躍動し始める春の訪れを感じる季節となりました。ご来賓の皆様、保護者、地域の皆様にご臨席を賜り、ここに本校第四十回卒業式を挙行できますことは、卒業生、教職員、在校生にとりまして大きな喜びでございます。ご臨席の皆様に心より御礼申し上げます。
六年生の皆さん、ご卒業、おめでとうございます。先ほど、一人一人に卒業証書を渡しました。「小学校の全課程を修了」、改めて六年間本当によく頑張りました。自信に満ちたその表情から、皆さんが過ごした六年間、そして六年生としてのこの一年間が、とても充実していたことを感じました。
この六年間を振り返ると、皆さんが入学した六年前はまだ「平成」の世の中でした。ここ東京でオリンピック・パラリンピックが開催されたのは皆さんが三年生の時。昨年の夏は眠い目をこすりながら、フランス、パリのオリンピック・パラリンピックに熱い声援を送りました。人工知能「生成AI」の技術は、私たちの未来に新しい可能性を広げてくれることでしょう。
そうした華やかな面があった一方、新型コロナウイルス感染症の世界的流行、ロシアによるウクライナ侵攻、パレスチナにおける紛争、そして昨年一月の能登半島地震など、当たり前の日常を突然奪い去るような衝撃的な出来事も次々と起きました。つい先日発生した岩手県をはじめとした各地の大規模な山火事では、いまだ苦しい避難生活を余儀なくされている方々も大勢います。そうした目を覆いたくなるような現実の陰で、一つの象徴的な出来事がありました。昨年十月、ノルウェーのオスロで、日本原水爆被害者団体協議会が、「核兵器のない世界を実現するための努力と核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきた」という理由によりノーベル平和賞を受賞したのです。戦争や原爆を体験した方が年々減っていく今日、人類が決して忘れてはいけない、この悲惨な記憶の継承は若い世代の意識にかかっています。平和大使として今回の授賞式にも参列した四人の高校生は「被爆者の思いを百パーセント届けることは難しいかもしれない。でも、証言を聞ける『最後の世代』として、継続して伝えよう、訴えようと改めて感じた」と話し、「微力だけと無力じゃない」というスローガンを世界中の人々に向けて発信しました。今日、小学校を卒業する皆さんにも、戦後八十。長い時間と気の遠くなるような努力の末に実現した国際平和や多様性の尊重、といった価値観を、どうかこれからも大切にしてください。現実をしっかり見つめ、今こそ「正義とは何か」を考え続けてほしいと思います。
こうした激動の世界情勢の中でも、皆さんはいつも前向きな気持ちを忘れず、自分のもてる力を一歩ずつ着実に高めてきました。ここ南大沢小学校でなければできない貴重な体験を、一生の財産として心と身体の中に積み重ねてきました。私がこの学校に来たのは一昨年の四月ですから、皆さんと一緒に過ごしたのは二年間でしたが、その間にも何事にも一生懸命取り組み、とりわけ低学年の児童に気を配り、優しく接する「南大沢小学校の伝統」を日々体現する素晴らしい姿を何度も目にしました。縦割り班、委員会、クラブ、そして休み時間…皆さんの行動の出発点はいつも下級生を楽しませる、という点にありました。つい先日、「六年生を送る会」が行われました。各学年の児童はこれまでお世話になった六年生へのお礼の気持ちを歌やクイズなどで楽しく表現し、それに応える形で六年生はこの一年間の下級生との関わりを劇にして表現しました。新入生の手を引いて教室に向かい、甲斐甲斐しくお世話をした四月に始まり、運動会の表現種目「ソーラン節」では四五年生に手取り足取り踊り方を伝授しました。そして秋の全校遠足では、帰る時間になっても「もっと遊びたい」と駄々をこね、挙句に帰り道では疲れて座り込む低学年の児童に手を焼きながらも、荷物を持ってあげ、やさしく励ます…。にぎやかな笑いに包まれた会場で、どこまでも心優しい六年生のこれまでの振る舞いの数々を思い出し、胸が熱くなりました。皆さんが当たり前のように日々取り組んできたことは、南大沢小学校の伝統として後輩たちにずっと受け継がれていくことでしょう。学校のリーダーとして素晴らしい学校を創ってくれてありがとう。
いよいよ四月からは中学生です。新しい出会いや中学校生活への期待にワクワクする一方で、不安を感じている人もいるかもしれません。でも、大丈夫。皆さんは一人ではありません、皆さんの周りにいる友達や家族、先生方や地域の方が必ず見守ってくれています。南大沢小学校で培った「やさしさ」を大切に、自信をもって一歩を踏み出してください。たくさん回り道をして、自分だけの人生を歩んでください。
保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。卒業証書を手にする姿に、感慨もひとしおの事と思います。私たち教職員一同は、お子様の健やかな成長を願って精一杯教育活動を行ってまいりました。行き届かぬところも多々あったかと思いますが、皆様のご協力、お力添えをいただきましたこと、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。これからは中学校という新しいステージに移ります。義務教育九年間の総仕上げです。この先試練もあると思いますが、お子様の心の支えとなり、一緒に乗り越えていただきたい、と願っています。
さあ皆さん、いよいよ旅立ちの時です。皆さんが中学校で元気に、そして笑顔で活躍することを心から願って、私の式辞とさせていただきます。
令和七年三月二十四日
八王子市立南大沢小学校 校長 安田 尚民