学校日記

南大沢小学校開校40周年記念式典 校長式辞

公開日
2024/11/22
更新日
2024/11/22

校長室より

 里山の豊かな自然が残る南大沢の周辺も、木々の葉が一層鮮やかに色づき、美しい秋が更に深まりを感じさせてくれる季節となりました。
 本日は、八王子市教育委員会教育長、安間英潮様をはじめ、市内学校関係の皆様、地域の皆様、学校運営協議会、みなみ会の皆様のご臨席を賜り誠にありがとうございました。本校の教育活動に日頃よりご尽力いただいている皆様に見守られ、八王子市立南大沢小学校開校四十周年の記念式典を執り行えますことは、100名の本校児童と我々教職員の大きな喜びです。
 南大沢小学校は、昭和六十年(1985年)四月一日に市内60番目の小学校として開校しました。開校当時の児童数は394名でした。それから毎年のように児童が増え、開校から9年目の平成四年(1992年)には、全校で926名という大規模な学校になりました。その間、マンションの建設、南大沢駅の開業、東京都立大学の移転、住民のための遊歩道の整備など、南大沢の街の開発も大きく進みました。そして、多摩ニュータウンエリアでも指折りの美しい街として成長していきました。同時に本校では、増え続ける児童の教室を確保するため、新たに八教室分の校舎を増築し、今の学校の形が出来上がっていきます。こう振り返ると、南大沢小学校の歩みは、まさに街の誕生、成長と共にあったことを実感します。
 そんな中、当時の子供たちはどんな毎日を過ごしていたのでしょう。今回の周年に向けた準備の中で、子ども達の目線でこれまでの学校の歩みを知りたい、と私は過去の卒業アルバムを開いてみました。開校当時の不安、発見、喜び…卒業作文の中には、大人の目からは見えない沢山の子ども達の思いが記録されています。その中でもとりわけ印象的だった、昭和六十年度、第一期卒業生のある男子児童の作文の一部を今日はご紹介させていただきます。

『南大沢のいいところ』
 南大沢に引っ越してよかった。山などがあって、遊ぶところがたくさんあるからだ。例えば、南大沢の周りの山にはいろんな道があって、そういう道には大体一つは脇道がある。それである日そんな道を探検してみた。大体頂上の辺まで来ると、そこには小さな畑と空き地があった。そこで、別の日にその空き地で焼き芋をやることにした。行く前に「サンワ」で「芋」と「中村のチーズあられ」を買って、「イセモト」で「ジュース」を買って山へ行った。友達が餅を持ってきていたので、火を起こして遊びで火の中に入れたらよく焼けた。今度はちゃんとアルミホイルに包んで入れたらよく焼けて美味しかった。次に芋を入れると、三十分くらいで焼けた。一つ目はおいしかったけど、二つ目はほとんど生で、しかも半分は腐っていた。
 また別のある日、自転車で出かけた時の帰り道に、山を越えて帰ろうと走っていたら、養鶏場があった。近くまで来ると、罠にかかったタヌキがいた。そのタヌキを見ていたら、養鶏場からおばさんが来てこう話してくれた。「このタヌキは養鶏場の鶏を狙ってくるんだよ。」まだこんなところにもタヌキがいるのかと思った。そのおばさんに「山を越えて向こうに行けますか?」と聞いたら、「いける」と言ったので、小さな山道を越えて帰った。
 よく行く山の中には大きな木があって、そこはみんなの遊び場になっている。自分の席なども決めて、枝の上に座ってお菓子を食べたり、木を削ってヤリや弓矢などを作って遊んだりして過ごした。そんな素敵な場所が南大沢にはたくさんある。僕の前に住んでいたところにはそんなところは全然無かった。南大沢に引っ越してきて遊んだりする面では、この街はすごくいいところだと思う。だから、あんまり山を壊してほしくない。

 40年前の六年生の素直な思いです。里山の自然の中に飛び込み、全身で謳歌する姿が生き生きと伝わってきます。それから40年。南大沢の街は成熟の時を迎え、遊歩道の街路樹は巨木になり、そしてこの学校も児童数百名という小さな学校に変貌しました。でも、変わらないもの、変えたくないものがあります。それは、里山の豊かな自然、地域の人との結びつきによって子ども達を育てる、ということです。小山内裏公園の環境保全活動、地域の方々と一緒に取り組むコメ作りや蚕の飼育などは南大沢小学校自慢の伝統です。最近では近隣の企業や大学との相互連携の取り組みも加わりました。時が変わっても、変わらないふるさと南大沢への愛着と誇りを育むこと。本日の式典の後半、児童による学校の紹介の中では、そんな地域や学校への思いを子ども達の言葉でつづった「周年記念歌」をご披露させていただきます。
 「仲良く、元気で、頑張る子」という教育目標を掲げ、たくさんの地域の皆様との結びつきの中で、児童一人一人が活躍し成長する、という日常が四十年もの間、途切れることなく続いていること。卒業生、保護者、地域の皆様、多くの皆様に改めて感謝いたします。これからも南大沢小学校は地域運営学校として、「すべての子供が笑顔になる学校」を目指して、児童の可能性を伸ばし、社会の中で自立して生きるために必要な力の基盤を育むことを基本理念とし、教職員が一丸となって、精一杯努力いたします。家庭や地域との協働により、特色ある教育を一層推進してまいります。これまでの歴史に学び、良き伝統を受け継ぎながら、さらなる発展に努めてまいります。
 終わりに、八王子市教育委員会教育長、安間英潮様をはじめ、ご来賓の皆様にはご多用中にもかかわらず、私どものためにご光臨賜りましたこと、改めて厚く御礼を申し上げます。今後とも、本校に対する温かいご指導・ご支援を賜りますようお願い申し上げ、校長式辞とさせていただきます。


 令和6年11月22日
八王子市立南大沢小学校校長 安田 尚民