6月26日 朝会「いのちの大切さを共に考える日」講話『いのち輝かせて』
- 公開日
- 2023/06/26
- 更新日
- 2023/06/26
校長室より
八王子市では、6月と7月の2か月間に各学校で「いのちの大切さを共に考える日」を設定し、生命の尊さについて考え、一人一人の人権を尊重し、いじめを未然に防ぐための取り組みを進めています。6月26日の朝会では、校長が「いのち輝かせて」というタイトルで、精いっぱい生きた一人の少年の記録を紹介しました。今から10数年前、N市立N小学校に在籍していたY君についてのお話です。
Y君は、2歳の時に発症した拡張性心筋症という難病と闘いながら、小学校の合唱団に所属し活動し、6年生の時にはNHK全国学校音楽コンクール小学校の部で銅賞を獲得しました。小学校を卒業後は、市内の中学校に進学し、吹奏楽部に所属してさらに大好きな音楽を続けていたY君でしたが、拡張性心筋症の病状は進行し、中学2年生の2学期になると入院生活が余儀なくされてしまいます。懸命の治療にもかかわらずその後病状は日に日に悪化。多額の費用、生涯にわたる数多くのリスクが伴うことなど、多くの問題と向き合いながらも、Y君、そしてご両親はアメリカのコロンビア大学での心臓移植という道を選択することにしました。懸命に生きるY君の思いは、同級生や友人たち、広く日本中のたくさんの人々の心を動かし、募金活動が始まると、わずか1か月で、渡航と手術に必要なお金が集まりました。直ちにチャーター機で渡米したY君でしたが、米国に到着した翌日、体調は急激に悪化し、残念ながらそのまま帰らぬ人となってしまったのです。
ご両親、サポートする人々は深い悲しみに暮れました。しかし、短い生涯を大好きな音楽、合唱とともに駆け抜け、命を輝かせたY君の生き方は、多くの人の心に残りました。募金で集められたお金は、同じように難病で苦しむ子供たちの命をつなげるために役立てられることとなりました。3年後、Y君のご両親は、現在の心境と支えてくださった人々への感謝の思いを手記として綴り公表しました…。
Y君が合唱団で活躍していた当時、同市内の隣接校に勤務していた縁から、Y君の歌声を聞いたり、直接話をしたりした経験があり、募金活動にもかかわっていたことを思い返し、今回南大沢小学校の子供たちに話をしました。「いのちは大切」ということは誰しもが観念的に理解しています。しかし、そのことを強く実感し、かけがえのないものとして尊重する行動に移せるか否かは、一人一人が自分自身の生き方と重ね合わせ、「精一杯生きる」ということ意味を自問できるかどうかにかかっています。少し立ち止まって、改めて自分とそしてほかの人のかけがえのない命について考える日にできれば幸いです。
最後に、Y君のご両親が公表している報告分の一節を紹介します。
「…Yを助けようとたくさんの方にいただいた善意を、Yの命をつなげることはできませんでしたが、今、そこに救える命があるならばその命につなげたい、と一心に思っております。Yにいただいた善意が他の誰かに受け継がれるのであれば、Yの魂も生き続けるのではないかと思います。みなさまの懸命な惜しみないご支援を胸に渡米し力の限り最後までやり遂げ天国へ旅立ったYも、自分と同じように病気と闘い生きようと頑張っている誰かに、命のバトンを渡し新しい命につなげたいと思っているはずです。 どうか、このような私たち親の思いをご理解いただけたら幸いです。 わが子の命を救うべく最後までできる限りのことができたのは、みなさまのあたたかい、あたたかい善意があってのことでした。そのようなみなさまの善意がこの先もずっと、「命」のために受け継がれていくことを信じています。…」(Y君を救う会の事務局ブログより)