授業寸景 NO11
- 公開日
- 2010/06/30
- 更新日
- 2010/06/30
校長より
授業寸景 NO11
某月某日 第2校時 算数
21人の少人数。このクラスの教室環境は極めて良質で、掲示物
の質、量ともにバランスが取れてい、ロッカー、棚なども良く整理
されている。さすがにと思わせる。
掲示・展示物が多すぎると圧迫感を受けるし、視覚的にも疲れる
ものであるし、少なすぎると空疎に感じられ、これまた、妙に落ち
着かぬものである。この教室には、何かほっとする温かさと落ち着
きがある。
板書には、三角形の組み合わせ図が2題描かれている。その右端
には、本時の学習を進める上での、思考の基本となる「三角形の内
角の和が180度になる」ことを示す四つの数字(角度)が書かれ
ている(45−45−90−180、30−60−90−180)。
これを使って、組み合わせ図で出来た角度を求めるのである。
指導者は、その立ち居振る舞いがゆったりとしており、声は優し
く、はっきりとわかりやすく、終始言葉を選んで話している。さすが
に、この指導者の授業を見た保護者や外部専門家から高い評価を受け
るだけのことがある。
さて、指導者は子供たちに組み合わせ図からア、イ、ウ、エの四つ
の角度(図示省略)を求めさせて、説明させる。
黒板の前に出てきて見事に説明する子もいれば、説明途中で「忘れ
ちゃった」という子もいて、あるいは二人で協力してアーダ、コーダ
と説明に挑戦する子もいれば、定規をあれこれ目まぐるしく動かして、
何とか説明しようとする子などもいて、それはなかなか面白かった。
その子供たちに対する指導者の目とことばの温かいことといったらな
い。
この4つの問題解決には「合わせて求める」、「引いて求める」、
この二つの思考(方法)が必要である。指導者は、子供たちにこの思
考・方法を理解させ、身につけさせようと、いろいろと問いかけ、気
づかせんとする。その様子、やり取りがまたいい。
この四つの問題を解いた後、スキルに入った。はじめに分度器の使
い方を注意して、子供たちを問題に取り組ませる。わかったこと(理
解)を今度は使う(きたえる)のである。
課題のスキルが終わった子からいよいよ個別の指導である。この時
の指導者と子供たち一人ひとりとの、この間合いが秀逸。額をつき合
わせてやり取りをする。「子供に光を当て、力を光らせる絶妙なる間
合い」、そんな風である。
子供たちが書いた図形を指導者が子供たちの目の前で分度器を使っ
て精確精密に測り直し、「分度器の使い方」、「目盛」への意識を高
めていく。ここがルーズだと駄目なのだ、このあたりの押さえは見事
というほかない。いつの間にか、指導者の周りに子供たちが増えてい
く。
指導者からオーケーをもらった子は、自席に戻って次の課題に取り
組み始める。指導者の周りから一人減り二人減りして、とうとう誰も
いなくなった。同時にその時、子供たちは全員が自席で新たな課題に
わき目も振らずに取り組んでいた。学習の形が見事に出来上がってい
る。指導者からの指示語がほとんどなくてこれである。
少人数指導の良さとこの指導者の見事な指導力の融合一体、充実し
た時間を私もまた過ごさせてもらった。