ちょうど1週間前は 「 成人の日 」 でした。
翌日の始業式では 「 箱根駅伝 」 のお話しをしてしまったので1週間ずれてしまいましたが、今日はその 「 成人の日 」 についてお話しさせてください。
2・3年生の皆さんは覚えているかもしれませんが、私は毎年この 「 成人の日 」 だけは、新聞の紙面に目を通す順番が違います。 SUNTORYという洋酒メーカーの広告の掲載されている紙面を探し、そこから読むのです。
毎年その広告では、作家の伊集院 静さんが、その年に成人式を迎えた新成人たちにメッセージを投げかけています。 「 風の中に立ちなさい。」 と題された今年の新聞広告を増し刷りしてきたので、読んでみましょう。
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「 風の中に立ちなさい。」 伊集院 静
大人って何だ?
大人とは、一人できちんと歩き、自分と、自分以外の人にちゃんと目をむけ、いつでも他人に手を差しのべられる力と愛情を持つ人だ。
簡単に言ったが、そういう人間になるのは大変だぞ。
君が大人になるためにひとつ助言をしておこう。 ホモサピエンスは世界を一人で歩くこと、見ることですべてを学んできた。 これは千年先もかわらぬ大人への授業だ。
まずはケータイを置きなさい。 インターネットを閉じなさい。 テレビを消しなさい。 パスポートを取得して、一番安い乗り物ですぐに日本を発ちなさい。 目的地は? どこだっていい。
この国以外の、風の中に立ちなさい。
世界を自分の目で見ることからはじめなさい。 そこには君がインターネットやテレビで見たものとまったく違う世界がある。 目で見たすべてをどんどん身体の中に入れなさい。
そこに生きる人々が何を食べ、何を見つめ、何のために汗をかき、なぜ泣いているのかを見つめなさい。 ともに食べ、ともに笑い泣きなさい。 それだけで十分だ。
でもラクな日々ではないぞ。 苦しい中にこそ本物はあるんだ。
やがて帰る日が来た時、君は半分、大人になっている。 その時こそ、本当の大人への祝杯を上げよう。
二十歳の出発に乾杯。
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「 成人の日 」 の学校HPにも書きましたが、このお正月に結婚された歌手・浜崎あゆみさんの 「 Heartplace 」 という曲の中に、「 歳をとっただけの子供も、大人と呼ぶべきなのかな 」 という歌詞があります。
答えは 「 NO 」 です。
法律上二十歳になれば 「 成人 」 と呼ばれるようになりますが、「 成人 」 = 「 大人 」 ではありません。 では、「 大人 」 とはどんな人を指すのでしょうか?
いろいろな言い方ができるかと思いますが、私も伊集院さんとほぼ同じ考えです。 つまり 「 一人できちんと歩き、自分と、自分以外の人にちゃんと目をむけ、いつでも他人に手を差しのべられる力と愛情を持つ人だ 」 と思います。
公共のルールやマナーを守れない若者や、自分の楽しみを優先してわが子に虐待をする若い親たちが、そうした 「 大人 」 の定義にあてはまらないことは言うまでもありません。
伊集院さんは、本当の大人になるためにも 「 まずはケータイを置き 」 「 インターネットを閉じ 」 「 テレビを消し 」 「 パスポートを取得して 」 どこでもいいから世界を一人で歩き、自分の目で見てくることを勧めていました。
後半部分は、さすがにまだ中学生の皆さんには無理なことでしょう。
しかし、伊集院さんの言いたいことは、情報機器やマスメディアを通して知識を得るだけでなく、新しい世界、自分の知らない世界に実際に身を置くことで、何かを感じ取ってほしいということだと思います。
学校生活の中で、今まで経験したことのない活動に挑戦してみる。 地域の中でボランティア活動をやってみる。 新たな1年の目標を立てて、その実現に向けてとことん努力してみる … 。
皆さんにできることだって、たくさんあるはずです。
ここにいる皆さんは早ければ5年後、遅くとも7年後には成人式を迎えます。
ぜひ皆さんは、その日を 「 単に二十歳になったことを祝う日 」 ではなく、「 大人のスタートラインに立った日 」 として迎えてください。
そして、中学生時代は、すでにそのための準備期であるということを覚えておいてください。