新型インフルエンザ対策の一環で、しばらくの間、全校朝礼は放送により行うことになっています。
今日は、校長講話の他、部活動担当の棟方先生から陸上部の表彰 ( 放送による紹介 ) がありました。
先週の朝礼でお話しできなかったことを、今日お話しさせてください。
夏休みの終盤、私はある新聞記事の見出しが目にとまりました。
それは、「 万引き … 4人に一人がゲーム感覚 」 という見出しでした。
記事の内容は、警視庁が過去に万引きで逮捕・補導した少年428人に対して行ったアンケート調査の結果を発表したものでした。 その記事によると、なぜ万引きしたのかという問いに対し、26.8%の少年が 「 ゲーム感覚 」 と答え、同じく23.3%の少年が 「 単に欲しかったから 」 と答えたそうです。
2つの理由をあわせると約50%になります。 万引きをした少年の約半数が 「 ゲーム感覚 」 「 単に欲しかったから 」 という理由であっさり犯罪行為に手を染めてしまっているという事実を、この記事は伝えていました。
私自身、よく本屋やドラッグストアで 「 万引きは犯罪です 」 と書かれたポスターを目にします。 そして、そのたびに悲しくなります。 なぜなら、「 お店のものを盗むのは、犯罪である。」 などというきわめて当たり前のことを、あえてそのように目立たせて貼り出さなければならないほど、この万引きという行為が日常化している …、 それほど私たちの社会が病んでいる … と思ってしまうからです。
「 盗みは良いことか、悪いことか? 」 と聞かれたら、誰もが 「 悪い 」 と答えるはずです。 では、皆さんは 「 なぜ、盗みは悪いことなのか? 」 と聞かれたら、何と答えますか。
何人かの人は、「 法律で禁じられているから。」 「 警察に捕まるから。」 と答えるかもしれません。 しかし、ここで大切なことは、「 では、なぜ法律で禁じられているのか? 」 「 なぜ警察に捕まるのか? 」 を考えることなのです。
その答えは、「 他人の財産や、他人の幸福に生きる権利を奪うことになるから 」 なのです。
そして、もうひとつ、絶対に盗みをやってはいけない大切な理由があります。
先の新聞記事で、「 ゲーム感覚 」 と同じぐらい多かった理由に 「 単に欲しかったから 」 がありました。 こちらも23.3%で、約4人に一人が万引きの理由として挙げていることになります。
「 〜 が欲しい 」 「 〜 したい 」 という思いを、欲求や欲望といいます。
それに対して、「 〜 が欲しいけど、我慢しよう 」 「 〜 したいけど、してはいけない 」 と、欲求や欲望にブレーキをかけるのが 「 理性 」 です。
人間と、それ以外の動物との決定的な違いは、この 「 理性 」 を持っているかどうかです。
「 〜 が欲しい 」 という欲求は、誰もが抱きます。 しかし、通常の 「 理性 」 を持っている人間であれば、それを手に入れるまでの正当な手段を考えます。 例えば、お小遣いを貯めるとか、働いてお金を稼ぐなどです。 そして、その手順に従って目標を達成したり、手に入れるのは無理と判断してあきらめたりするのです。
また、時に不当な手段 … たとえば、盗むなどの行為が頭をよぎったとしても、盗まれた人の悲しみや、それをやったら自分がどうなるかという先の事態を予測して、思いとどまるのです。
このような思考回路を働かせるのが 「 理性 」 であり、繰り返しますが、その 「 理性 」 を持つか持たないかが、人間とその他の動物との決定的な違いなのです。
「 渇すれども盗泉の水は飲まず 」 という言葉があります。
「 たとえどんなにのどが渇いても、盗んで手に入れた水だけは決して飲まない。」 という意味ですが、この言葉は、唯一 「 理性 」 を持つ生き物である人間の、誇りや尊厳を表している言葉だと思います。
「 万引きは、ゲートウェイ犯罪 」 と言われます。 「 万引きは、さらに悪質で重大な犯罪に手を染めていく、入り口の犯罪 」 という意味です。
万引きという行為は、他人の財産や権利を奪うとともに、自分の人間としての誇りや尊厳を傷つける行為であり、さらに自分を深い闇の中に引きずり込んでいく行為であるということを、覚えておいてください。
校長 武田幸雄