《 本日は体育大会の全校練習があるため、校庭で行いました 》
本校では、いよいよ今週末に迫った創立20周年記念体育大会にむけて、気運が盛り上がってきています。
一方で、東京都では2016年のオリンピックを東京で開催させようということで、招致活動が盛んになっています。 各教室にも、招致委員会から配布された小さな幟 ( のぼり ) が飾られているのではないでしょうか。 正面昇降口には、大きな幟も飾られています。
その幟には、なんと書いてあったか覚えていますか?
「 日本だからできる。 あたらしいオリンピック! パラリンピック! 」 と書いてあったはずです。
では、パラリンピックとは、何のことだかわかりますか?
簡単に言うと、障害者の方たちのオリンピック、障害者の方たちによるスポーツの祭典です。
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そのパラリンピックで、アトランタ、シドニー、アテネ、北京と4大会連続で出場し、合計15個の金メダルを獲得した成田真由美さんという水泳選手がいらっしゃいます。
私は先週、ある研修会でこの成田さんの講演を伺う機会がありました。
成田さんは、皆さんと同じ中学生のときに横断性脊髄炎という病気にかかり、下半身が麻痺してしまいました。 以来、車椅子の生活を送っていらっしゃいます。
中学生という多感な時期に車椅子生活を余儀なくされて投げやりになっていた成田さんが、前向きに生きていけるようになったきっかけ、 成田さんと水泳との出会い、 成田さんのライバルの話、 障害者のひとりとして現代社会に望むことなど、たくさんのお話を伺いましたが、時間の関係上ひとつだけ紹介します。
成田さんのお友達で、片足のない方がいらっしゃるそうです。 その友達は、義足をつけていました。 しかし、普段はズボンに隠れて義足は見えないし、見た目は体も立派で健康そうな若者だそうです。
ある日、その友達が比較的混んでいる電車に乗り、優先席に座っていました。 すると、しばらくじろじろと友達を見ていたおばさんが、業を煮やしたようにこう言ったそうです。
「 あなたより年をとった人が立っているのだから、席を譲ったらどうなの?」
友達は、「 私は、足が不自由なのです。」 と答えました。 それでもおばさんは、「 そんな嘘をついてまで座っていたいの? 」 と、納得しません。 やむを得ず友達は、ズボンをめくって義足を見せて、ようやくわかってもらえたそうです。
成田さんはこの話を通して「自分のように車椅子に乗っていれば一目で障害者とわかってもらえるが、世の中には外見からはわからないけれど、実は深刻な障害を抱えている人もいるということを理解してもらいたい。」 とおっしゃっていました。
皆さんは、どうでしょうか?
例えば、皆さんが自転車に乗って急いでいるとき、前を人が歩いていたとします。 よけてもらいたいと思い、ベルをチリンチリンと鳴らしました。 でも、その人はどかない。 危ないと思って、さらにベルを鳴らします。 それでも、相変わらずその人はお構いなしに歩いている…。 そうなると、もしかしたら 「 邪魔だな、早くどけよ! 」 なんて思ってしまうのではないでしょうか?
でも、そんなとき、もしかしたらその人は聴覚障害者、つまり、耳の不自由な方なのかもしれない……と、そんなふうに考えることができたならば、その後の皆さんの心のあり方や行動が、少し変わってくると思います。
心臓にペースメーカーをつけている人がいます。 体の中に埋め込んでありますから、もちろん外見からはわかりません。 このペースメーカーは、携帯電話の電磁波で誤作動を起こします。 命に関わるのです。 ですから、ペースメーカーをつけている人は電車に乗るとき、携帯電話の電源を切ることになっている優先席付近に乗ります。
それなのに、優先席付近で電源を切らない人はたくさんいます。 それどころか、平気でメールを打ったり、中には通話をしている人さえ見かけます。 私も注意したことがありますが、その人は 「 俺だけじゃないだろ! 」 と、開き直っていました。
これだって、先のように、ちょっと考え方・意識を変えるだけで、優先席付近では携帯電話の電源を切る、どうしても切れない事情があれば優先席付近から離れる、といった配慮をするようになるはずです。
ぜひ皆さんも、「世の中には、外見からはわからなくても、深刻な障害を抱えている人もいる。」という意識を持ってください。
現在、わが国は高齢化社会になりつつあります。 身の回りに、お年寄りが増えています。 年をとるということは、それまで当たり前にできていた動きがとれなくなる、若い頃のように体を動かせなくなるということでもあります。 つまり、見方によっては、身の回りに障害を持った方が増えるのと同じような状況になるのです。
そんなとき、一人ひとりが少し考え方や意識を変えるだけで、みんなが住みやすい社会、思いやりある社会が作れるのではないかと思います。
ぜひ、考え方・意識を変えて、そんな社会を築いていきましょう。
校長 武田幸雄