※ 写真は、先週 学校から見た丹沢山系や富士山です。
昨日の学校HPでもご報告しましたが、南大沢警察署の方を講師にお迎えして行ったセーフティ教室では、「 万引き防止 」 をテーマに取り上げました。
この 「 万引き 」 については、今年度に入って全校朝礼や道徳の時間、学年集会等を活用して継続的に指導し、同時に保護者会やPTA運営委員会でもご家庭でのご指導をお願いしてきたところです。 今後も折にふれて 「 ゲートウエイ犯罪 」 のゲート ( 入り口 ) を通らせない指導を展開してまいりますので、ご家庭のご理解とご協力をお願い申し上げます。
さて、現在 讀賣新聞では 「 犯罪異変 」 と題したルポルタージュの第2部で 「 万引き − 崩壊するモラル 」 という特集記事を組んでおります。
昨日のセーフティ教室の私の挨拶でも紹介しましたが、改めてその記事の内容を中心にお話しさせてください。
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一昨日(10日)の同紙・特集記事では、万引きを 「 やめられない 」 人たちの実態が報告されていました。
では、なぜ 「 やめられない 」 のか?
それは、簡単に言ってしまうと、万引きの成功に 「 達成感 」 を覚えてしまい、その快感を求めて繰り返してしまうからです。 言うなれば 「 万引き依存症 」 になってしまっているからなのです。
中には成功体験を繰り返しているうちに、( お金はあるのに ) いつの間にかお金を払うのがばからしくなってしまったという常習者もいるそうです。
記事の中で、アルコール依存症などの専門病院で行われた、万引き常習者の子供を持つ保護者を対象とした講義の一端が紹介されていました。
かつて万引き常習者だったという28歳の女性は、参加した保護者を前にこんなことを話したそうです。
「 小学4年の頃、働きに出ている母親の関心をひきたくて万引きを始めた 」
「 ( そのうちスリルが忘れられなくなり )警察に捕まったときも 『 帰りには何を盗ろうか 』 と考えていた」
かつて私が教員になった頃、万引きで捕まった生徒はほとんどの場合 「 ( 万引きした商品が ) どうしても欲しかったが、お金がなかったから 」 といった理由が動機でした。 乱暴な言い方をすれば 「 物欲 」 が動機だったのです。
しかし、最近は必ずしもそうではないケースが増えてきたように思います。
さまざまなストレスや欲求不満のはけ口として、スリルを求めて万引きを行い、成功したときの達成感・成就感が忘れられずにまた繰り返す … というのが、その典型的なケースでしょう。
そして、そんな負の連鎖に拍車をかけてしまうのが、「 わが子と正面から対峙できない親や、モラルの低下した親の増加 」 です。
本日付けの同紙・特集記事では、万引きでわが子が捕まっても 「 子どもとの衝突を恐れて、叱ることのできない親 」 や 「 『 万引きって犯罪なんですか? 』 と平気で言うなど、万引きを軽く考えている親 」 の問題を取り上げていました。 そして、その記事の最後は、万引き被害の深刻な書店経営者の、次の言葉でしめくくられています。
「 親のモラル低下は想像以上に深刻。 子どもの指導法だけではなく、親への教育を社会全体で考える時が来ているのではないか 」
その思いは、実は私たち教員も同じなのです。
そして、それは 「 万引き 」 に限ったことではありません。
わが子の起こした暴力事件に対して 「 今ぐらいの年ごろで、喧嘩するのは当たり前。 喧嘩でケガをさせられて、文句を言うほうが悪い 」
わが子の起こした学校の器物破損に対して 「 もともと壊れやすくなっていたのだから、学校に責任がある 」
わが子が宿題や提出物を出さないことに対して 「 黙っていても子供が提出するような工夫や、子供の負担軽減について、もっと学校が努力するべき 」
そして、その挙げ句 「 家庭の教育方針について、学校にとやかく言われる筋合いはない 」 …
上記は私がかつて勤めていた学校の事例でもあり、必ずしも別所中に限定するわけではありません。
ただし、似たような事例は、地域や学校を問わず発生しています。
子供を一本の木にたとえるならば、私たち教員はその木がまっすぐ伸びていってくれることを望み、その助けとなるべく力を注いでいます。 そして、時に曲がった方向に伸びてしまいそうな木にも、さまざまな手を打って本来伸びるべき方向に導く努力をしているのです。
しかし、時折、本当にその木をまっすぐ伸ばそうと思ったら、実は木が根を張っている土壌から改善しなければならないのではないかと感じることがあります。 「 土壌 」 とは、言うまでもなく 「 家庭環境 」 であり 「 保護者の価値観 」 でもあります。
そして、その現実に行き当たったとき、私たちは自分たちにできることの限界を知り、しばしば途方に暮れてしまうのです。
非常に難しい問題ではありますが、これからもご家庭との共通理解を図りながら連携を強化し、子供たちの健全育成に力を注いでまいりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
※ 大変長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。 お読みになった感想等ございましたら、学校までお寄せください。
校長 武田幸雄