5月28日(木)
廊下を歩いていると、「 You’re Beautiful 」(ジェイムス・ブラント)が聞こえてきました。 好きな曲の一つなので、引き込まれるように教室に入ると、3年生の英語の授業でした(写真・上)。
授業のはじめにウォーミングアップとして、日替わりで海外のポップスを流しています。
英語は少人数授業 ( 2クラスを三つに分割 ) を展開しているので、他の教室ものぞいてみました。(写真・中) すると、そこではやはりウォーミングアップとして、K1の故アンディ・フグの入場曲としても知られる、イギリスの伝説的ロックグループの名曲 ( 答えを言ってしまっていますね! ) の歌詞を完成させる作業をしていました。 ( 答え合わせは明日の授業で行うそうです。)
授業では、どのグループも過去完了形の疑問文・否定文を学習していました。
( 写真・下は、もうひとつのグループの授業風景です。 後ろを向いている生徒が多いのは、決して授業に集中していないからではなく、二人ひと組になって暗唱の練習をしているからです。 念のため…。)
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少人数授業はもちろんのこと、海外のポップスを取り入れたり、さまざまな教材を準備したりといった英語の授業を見ていると、( 手前味噌かもしれませんが ) 指導法の工夫・改善に取り組む教員の熱意を感じます。
同時に、テンポよく英語で質問や指示が出される様子、カラフルな教科書、そして何より、授業で用いられる書体が筆記体ではないということなど、かつて自分が中学生だった頃と比べ隔世の感があります。
お恥ずかしい話ですが、私は中学生時代に英語で挫折しました。
厳密に言うと、「 三単現のS(エス)」 と 「 関係代名詞 」 で挫折したのです。
「 三単現のS 」 とは、ご存じのとおり 「 主語が三人称・単数で現在文のとき、動詞の最後にSをつける 」 という法則です。
例えば、主語が 「 私 」 の場合は一人称ですから、
I play tennis.( 私はテニスをします。) ですが、
主語が 「 彼 」 の場合は三人称なので、
He plays tennis. となるわけです。
なぜこんな簡単な法則でつまずいたかというと、当時の英語の先生がどういうわけかこの 「 三単現のS 」 に執拗にこだわっており、文中にそれが出てくると必ず 「 三単現のエス、マル!」 と大きな声をあげ、教科書に○をつけさせるのです。
先の例文で言うならば、その先生は
「 He plays 三単現のエス、マル! tennis.」
と読むわけですから、聞いている方は 「 エス、マル!」 が何回も連続して出てくると、教科書に○をつけるのに忙しいわ、英文を読む流れは途切れるわ、そのうち何を読んでいるんだかわからなくなってくるわで、徐々に学習意欲を喪失していったわけです。
「関係代名詞」は、これもご存じのとおり、文と文とをつなぐ役割 ( 接続詞 ) と、文中に出てきた名詞の代わりを果たす役割 ( 代名詞 ) を果たします。
例えば、I have a friend who lives in USA. ( 私は、アメリカ合衆国に住む友達がいます。) の 「 who 」 などが関係代名詞です。
先の 「 エス、マル!」 先生は、この 「 who 」 などの関係代名詞を、必ず 「 〜 ところの 」 と訳しました。 つまり、例文で言えば、「 私は、アメリカ合衆国に住むところの友達がいます。」 と訳すわけです。
これは今でも便宜上使われる訳し言葉ですが、私にはこの 「 ところの 」 が、どうにも理解できなかった……というより、この問題については、先生ではなく私の方が執拗なこだわりを持ってしまったのです。
「 who 」 とは 「 誰 」 という意味ではないのか?
他の関係代名詞…、例えば 「 that 」 にしても、「 あれ 」 という意味ではないのか?
それが、どうしてみんな 「 ところの 」 という意味になるのか?
そもそも、「 ところの 」 とは一体どういう意味なのか?
……などと、とりとめのない疑問にこだわり、明快な解答を得られないまま前に進めなくなってしまいました。
もちろん、私が英語に挫折した原因を、「 エス、マル!」 先生に押しつけるつもりは毛頭ありません。 同じ授業を受けていながら、現在英語に堪能な同窓生はたくさんいるわけですし…。
ただ、現在の英語の授業が、当時と比べて格段に教える側のスキル、教材の内容・種類ともに進歩していることは間違いありません。 それに加えて、本校では少人数指導を展開し、教員も情熱にあふれています。
そんな本校の生徒は、いつか全員がバイリンガルに……とまではいかないまでも、私と同じ轍を踏むことだけはなさそうです。
校長 武田幸雄