「生徒のみなさんへ」 第2学年 小柳恵美子
二十億光年の孤独
人類は小さな球の上で 眠り起きそして働き ときどき火星に仲間を欲しがったりする 火星人は小さな球の上で 何をしてるか 僕は知らない (或はネリリし キルルし ハララしているか) しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする それはまったくたしかなことだ 万有引力とは ひき合う孤独の力である 宇宙はひずんでいる それ故みんなはもとめ合う 宇宙はどんどん膨んでゆく それ故みんなは不安である 二十億光年の孤独に 僕は思わずくしゃみをした (谷川俊太郎詩集『二十億光年の孤独』より) 私がこの詩に出会ったのは、ちょうどみなさんと同じ中学生のときでした。谷川俊太郎さんといえば、『生きる』『春に』『朝のリレー』など、たくさんの有名な詩がありますが、私はこの『二十億光年の孤独』が最も好きです。孤独や不安ということばが出てくるのですが、それでもこの詩はどこかユーモラスであり、心が軽くなると感じています。 ―私たち人間は、広大な宇宙の片隅で生きているちっぽけな存在。寂しさや悩みを抱えながら、友達や話し相手を求めている。遠く離れた惑星の火星人も仲間を欲しがっているかもしれない。膨らんでいく宇宙の中で取り残されたような不安にかられてしまう。ぶるっと寒気がしたのか、思わず出るくしゃみ。― 私は、このくしゃみの部分が大好きです。果てしない宇宙に思いを巡らせていたら、最後に一気に現実に引き戻され、私たちはちっぽけな存在でも確かに生きているという実感をさせてくれるからです。宇宙というとてつもなく広い世界で生命をもって存在していることが、素敵で奇跡のようなことに思えます。 今私たちは、これまで経験したことのない状況に置かれています。それでも1日24時間は変わることなく、毎日生活をしていきます。友達に会ったり、思いきり運動したりなど、今まで当たり前にやっていたことができなくて、もどかしい日々が続きますが、休業中だからできることもあるでしょう。健康に気を付け、自分なりにネリリし、キルルし、ハララして(「眠る、起きる、働く」を火星語っぽく(?)表現したらしいです)ください。私は、自分を元気づけてくれる詩集『二十億光年の孤独』の詩を毎朝1編ずつ読んでから、一日一日を過ごそうと思っています。 |