3年生・保健体育の授業の様子です。
今日は、男子が保健の授業で 「 喫煙と健康 」 について学習していました。
たばこの害に関する教材ビデオを見てから、喫煙の健康への影響や、未成年者の喫煙の害、周りの人への影響などについて、プリントにまとめました。
また、それとは別に担当の木村先生から、自己管理できるかどうかという視点で 「 喫煙がカッコイイと思うのは、大きな間違い 」 といったお話しもありました。
2クラスの男子が一教室に入っての授業はちょっと窮屈そうでしたが、みんな真剣にビデオを見て、プリントをまとめていました。
芥川龍之介の小説に、『 煙草と悪魔 』 という作品があります。
16世紀、宣教師 フランシスコ・ザビエルの随行員に化けて渡来した西洋の悪魔が、日本に初めてたばこを持ち込み栽培を始める。
あるとき悪魔は、自分のたばこ畑の前を通りかかった牛商人と、「 この植物(たばこ)の名前を当てられたら畑を全部くれてやるが、当てられなかったらお前(牛商人)の体と魂をもらう。」 という賭けをする。 が、悪魔は結局、とんちをきかせた牛商人に 「 たばこ 」 の名前を当てられて賭けに負け、畑を取られてしまう……という話です。
小説の後半に、芥川はこんなことを書いています。
「 自分は、昔からこの伝説に、より深い意味がありはしないかと思っている。 何故と云えば悪魔は、牛商人の肉体と霊魂とを、自分のものにする事は出来なかったが、その代わりに、煙草は、あまねく日本全国に、普及させることが出来た。 してみると、 《 中略 》 悪魔の失敗も、一面成功を伴っていはしないだろうか。 悪魔は、ころんでも、ただは起きない。」
( 一部、現代仮名遣いに置き換え )
たばこの煙のことを 「 紫煙(しえん)」 などと美しく表現することがあります。
しかしながら、一度その味を覚えてしまうと依存症 ( ニコチン中毒 ) になってやめられなくなり ( 魂を奪われ )、徐々に健康がむしばまれていく ( 体が奪わていく ) ことを考えると、同じ 「 しえん 」 でも、むしろ 「 死煙 」という漢字の方が似つかわしい。 まさに、悪魔によって魂も体も奪われる 「 死の煙 」 なのではないかという気がします。
依存症と言えば、『 トム・ソーヤーの冒険 』 で知られるアメリカの作家、マーク・トウェインは、「 禁煙なんか簡単さ。 私なんてもう100回以上もやっているよ。」 というユーモアに富んだ言葉を残しています。
しかし、自分だけでなく周囲に及ぼす悪影響を考えたとき、100回以上の禁煙を単なる笑い話ですませることはできません。
かつて欧米諸国から 「 喫煙大国 」 と揶揄された我が国でも、健康増進法をはじめ法整備も進み、たばこ増税も議論され始めました。 さらには、病院に禁煙外来という科目ができたり、禁煙補助剤が市販されたりするようになった今日、喫煙者がたばこを断ち切る条件は整いつつあると言えるでしょう。
一方で、学校が重点を置くのは、そうした 「 禁煙治療 ・ 禁煙支援 」 ではなく、「 喫煙予防 ・ 嫌煙教育 」 です。 つまり、「 どうやって、たばこをやめさせるか 」 ではなく、「 どうやって、最初の一本を吸わせないか 」 なのです。
そのために、今日のような授業だけでなく、養護教諭や外部講師による禁煙指導なども行っております。
子どもにとって最も身近な環境であるご家庭におかれても、子どもから 「 紫煙(死煙)」 を遠ざけるご配慮・ご指導をお願い申し上げます。
そして、生徒の皆さん。
皆さんがもし最初の一本に火をつけたとしたならば、ニヤリと不気味な笑みを浮かべながら、その様子をそっと見ている悪魔がいることを忘れないでください。
「 フッフッフ…。 また一人、肉体と魂をオレ様の手に入れることができたぞ。」
※ ちなみに、かつては私も喫煙者の一人でしたが、これだけは負けず嫌いの性格が幸い?してか、一度の禁煙で完全に 「 断煙 」 することができました。
校長 武田幸雄