2月2日朝礼講話
- 公開日
- 2009/02/02
- 更新日
- 2009/02/02
校長より
1月19日の朝礼が当日急に中止になったので、少し時期がずれてしまいますがそのときにお話しする予定だった話をさせてください。
1月12日は、成人の日でした。私は、毎年この成人の日に、密かに楽しみにしていることがあります。それは、毎年この日の新聞に掲載されるサントリーという洋酒会社の広告です。
その新聞広告は、成人の日にあたり、お酒が飲めるようになった新成人に向けて、作家の伊集院静という人がメッセージを投げかけるものです。今から読んでみます。
「新成人おめでとう。
君は今日どこで二十歳の日を迎えただろうか。社会は君を今日から大人と呼ぶ。
しかし君が知るとおり、今、日本も、世界も歴史にない不況に直面している。
その原因はこころない大人が金を得ることを人生のすべてと考えたからだ。金があれば何でも手に入ると、卑しいこころを抱いたのだ。自分だけが裕福ならいいとしたのだ。その大人たちの大半は先進国で最高の学問をした人たちだ。
なぜこんなことが起きたのか。それは人が生きる上で何が一番大切かを学ばなかったからだ。若い時に裕福に目が向き貧困を見なかったのだ。
日本は大国なんかじゃない。ちいさな国の、君はちいさな存在だ。しかし君の未来は、時間は、可能性は限りなく大きい。家族や友を想う気持ちは素晴らしいことだ。世界を見よう。真実を知ろう。君と同じように他人のことを自分のことと考えられる大勢の若者がいる。自分だけが、日本だけがよければではいけないことを学ぼう。
さあ外へ出よう。世界を見よう。真実を知ろう。歩き疲れたら一杯のウィスキーでこころを休めて、また歩きだそう。二十歳の君に乾杯。」
(以上、1/12付新聞広告より 原文は改行なし それ以外は原文のまま)
君たちも知っていると思いますが、「派遣切り」「就職内定取り消し」といった言葉が新聞やニュースで毎日のように取り上げられるほど、現在世界や日本は深刻な不況・不景気に陥っています。
その原因を伊集院さんは、「こころない大人が金を得ることを人生のすべてと考えたから」としていました。そして、その「こころない大人」とは「金があれば何でも手に入ると卑しいこころを抱いた」人であり、「自分だけが裕福ならいいとした」人のことだと述べていました。しかも、そういう大人の大半が「先進国で最高の学問を修得した人たち」であるとしています。
なぜ先進国、つまり文明や技術、経済の発展した国で高度な学問を学んだはずの人たちが、このような不況をつくり出してしまったのでしょうか。
それについて伊集院さんは、こうおっしゃっていました。「それは人が生きる上で何が一番大切かを学ばなかったからだ。」
さて、皆さんは「人が生きる上で一番大切なもの」とは何だと思いますか? あらかじめいっておきますが、この問いに正解はありません。答えはたくさんあります。
しかし、それは決して「お金」ではないということだけは、伊集院さんのメッセージからわかったと思います。逆に、お金が一番、お金がすべてと考えた大人のせいで、今日のような不況に直面してしまったのです。
では、改めて考えてみてください。人が生きる上で何が一番大切なのでしょうか? もう一度言いますが、答えはいろいろあっていいのです。ただし、それを考えるヒントが、やはり伊集院さんのメッセージの中にありました。「世界を見よう。真実を知ろう。自分だけが、日本だけがよければではいけないことを学ぼう。」
本当の豊かさとは何か? 本当に豊かな生き方とはどんな生き方か? そうしたことを考えるのに、何も二十歳になるのを待つ必要はありません。13、14、15歳の感性をもってこれを考えてみることも、とても意義深いことだと思います。
校長 武田幸雄