「生徒のみんなへ」 第3学年 高橋成美

 学校に行くことができないという、今と似ている状況を私も過去に経験しました。そのときのことを踏まえてみんなにメッセージを送ります。

 私は福島県の出身です。2011年3月11日、東日本大震災を経験しました。その当時、私は高校生でした。英語の授業中、机の下に潜って頭を守っても意味がなく、机が吹っ飛ばされそうなほどの大きな揺れで、目の前の壁にはひびが入っていきます。家に帰ると、家具や食器類はほとんど壊れ、その後断水が何日も続きました。お風呂に入ることも、トイレに行くことも、普通のようにはできませんでした。

 学校にも一定期間行くことができませんでした。スーパーや商業施設の営業もままならないので、家から出ることもできません。そのとき私は「このままじゃいけない、家でもできることをやっておこう!」と思い、毎日ピアノを練習しました。所属していた合唱部の活動に役立つように楽譜をたくさん読みました。学校から出された宿題も毎日やり、大学入試に向けた勉強もやりました。

 学校が再開してからも、校舎がほとんど倒壊して使えなかったので、体育館を何等分かし、教室を作りました。あるクラスは理科室が教室です。クーラーもありません。そのような状況でも、先生たちはどうしたら生徒が学習に集中できるか、どうしたら部活動が再開できるか、真剣に考えてくれていました。

 合唱部で、みんなに元気を届けようと避難所や老人ホームを回り、歌を披露する機会を作りました。聴いていた人が次々と涙を流し、喜んでくれたのです。そのとき、音楽のもっている大きな力に気付き、「将来、音楽に携わって仕事をしていこう」と決めました。

 今の私があるのは、震災で経験した空白の時間があったからだと思っています。『当たり前の日常のありがたみ』、『家族や友達、学校の先生たちのおかげで学校生活を送れていたこと』、『音楽のもっている力』この3つに気付くことができました。そして今、こうやってみんなに音楽を教えることができています。

 学校が再開されるまで、みんなには自分ができることをぜひやってほしい。宿題はもちろん、家族との時間を大切にする、本を読む、音楽を聴く、進路について考える……、この期間にやったことが、この期間で得たことが、将来につながる可能性だってたくさんあります。私がそうでした。暗い気持ちでいるだけでなく、今の状況を前向きに捉え、“何か”を得て学校に来てください。みんなと関わることができる日を楽しみにしています。

※写真は宮城県石巻市の小学校 2011年5月校長撮影
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