※ 今日は、多くの3年生が朝から都立高入試の合格発表に出かけているので、少し寂しい全校朝礼でした。※
おはようございます。
約2週間にわたって熱戦を繰り広げてきたバンクーバー・オリンピックが、今日閉幕します。
都立高入試や定期考査があったので、あまり見られなかったかと思いますが、皆さんはどんな競技が印象に残っていますか。
私も、日本人がメダルを取ったフィギュアスケートやスピードスケートはもちろん、さまざまな競技をさまざまな視点から楽しませてもらいました。 そして、その中でも一番印象に残っているのが、女子モーグルの上村愛子選手です。
校長講話・ここをクリック
上村選手は、今回が4回目のオリンピック出場でした。
最初の長野オリンピックでは7位。 次のソルトレークでは6位。 さらに前回のトリノでは5位。 そして、今度こそメダルをと期待された今回も、あと一歩のところでメダルに届かず4位でした。
試合の後、人前ではめったに泣かないという上村選手が、珍しく涙を流し、それでも懸命に笑顔を作ろうとしながら、こうコメントしていました。
「 なんで、こんなに 一段一段なんだろう … 」
上村選手は、先天的な心臓の障害を持って生まれてきました。 中学2年生の時には、所属していたスキー部の中で 「 いじめ 」 にあい、退部せざるを得なくなったそうです。
私には、そうした困難を一つ一つ乗り越えてきた姿と、12年間かけて順位を一つ一つ上げてきた姿とが、重なって見えました。
「 神様は、それを乗り越えられる者にしか、試練を与えない 」 という言葉があります。 試合後、泣きながら、それでも懸命に笑おうとしながらインタビューに答えている上村選手を見て、私はその言葉を思い出していました。
そして、そういう言葉の似合う上村選手を、美しい人だなあと思いました。
人の泣き顔を見て 「 美しい 」 と思ったのは、今までで初めてです。
上村選手と、上村選手のお母さんが出演している、ある生命保険会社のテレビCMがあります。 そのCMでは、世界選手権でコースを滑り降りる上村選手と、それを見守るお母さんの姿にかぶせて、次のようなテロップが流れます。
「 試合のとき、いつも母は言う。」
「 順位なんてどうでもいい。 無事に滑ってくれさえすれば。」
「 もうしばらく心配かけてしまいそうです。 ごめん。」
上村選手がアスリートである以上、結果は常に求められます。 順位や勝敗にこだわることは、アスリートの条件でもあるのです。
しかし、当然のことながら、お母さんは上村選手のことをアスリートとしては見ていません。 だからこそ、「 人間には、順位や勝敗以上に大切なものがある 」 という見方で、わが子の試合を見られるのでしょう。
バンクーバーでの試合のあとも、お母さんは目を細めてにっこり笑いながら、こんなコメントを残していました。
「 愛子の母親でよかった。 オリンピックでも一つずつ順位を上げていったように、これからも、ゆっくり、人間として成長してくれると思う。」
先ほど紹介した生命保険会社のテレビCMでは、BGMとして 「 ゆず 」 というアーティストの 「 虹 」 という曲が流れています。 その歌詞の中に、次のような一節があります。
「 越えて 越えて 越えて。 流した涙は いつしか 一筋の光に変わる 」
アスリートとしても、人間としても、一つずつ困難や試練を乗り越えて成長していく上村選手に、ぴったりの曲ではないかと思います。 そして、私自身、いつか上村選手ほどではないにせよ、少しはこんな曲の似合う人間になっていきたいと思いました。
今日のお話は、以上です。